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恋いろ神代記~神語の細~(おしらせあり)
第4章 傘爺
何も言葉が思い浮かばず、なんとなく胸の辺りがモヤモヤする。だからそれを謝れば、目の前のおじいさんは緩く頭を横に振った。
「君達が気にすることは、何もないよ。ああ……君達は、姉弟? お友達かな」
「うぅん。双子です。似てなくて、ソーセージじゃないけど」
「そうか」
何かに堪えているように固まっていたおじいさんの、悲しそうだった顔が少し崩れる。それは詩織にもちょっとだけ見慣れた、自分達を可愛がってくれる田舎のおじいちゃんおばあちゃん達とどこか通ずるような、穏やかな笑みだった。
「仲良しなんだね。でも、傘を落としたら駄目だよ。きっとおそろいだったんだろう?」
「あ……そっか。はい……」
そういえば詠士の傘は、この人が拾って塀に掛けてくれていたんだった。それを思い出して、詩織はもう一度頭を下げる。
「もしかして、あたし達も水色の傘持ってたから、おばあちゃん間違えちゃったのかな?」
「そうかもしれない。……妻が、買ってあげたものだから」
「あたし達のも、お母さんが買ってくれたんです。でも、スグに変わっちゃうかも。詠士、よく引きずって先っちょに穴開けるし、壊しちゃうから。そうするとお母さんは怒るけど、お父さんは褒める。元気なショーコだからって」
「君達が気にすることは、何もないよ。ああ……君達は、姉弟? お友達かな」
「うぅん。双子です。似てなくて、ソーセージじゃないけど」
「そうか」
何かに堪えているように固まっていたおじいさんの、悲しそうだった顔が少し崩れる。それは詩織にもちょっとだけ見慣れた、自分達を可愛がってくれる田舎のおじいちゃんおばあちゃん達とどこか通ずるような、穏やかな笑みだった。
「仲良しなんだね。でも、傘を落としたら駄目だよ。きっとおそろいだったんだろう?」
「あ……そっか。はい……」
そういえば詠士の傘は、この人が拾って塀に掛けてくれていたんだった。それを思い出して、詩織はもう一度頭を下げる。
「もしかして、あたし達も水色の傘持ってたから、おばあちゃん間違えちゃったのかな?」
「そうかもしれない。……妻が、買ってあげたものだから」
「あたし達のも、お母さんが買ってくれたんです。でも、スグに変わっちゃうかも。詠士、よく引きずって先っちょに穴開けるし、壊しちゃうから。そうするとお母さんは怒るけど、お父さんは褒める。元気なショーコだからって」