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恋いろ神代記~神語の細~(おしらせあり)
第4章 傘爺
──このおじいさんは、一体なんの話をしているんだろう?
「……おとぎばなしみたい」
「そうだね。でも、君は真夜中の世界にドキドキしたり、ワクワクしたりしないかい? 君達が眠っている間の世界は、きっと君達にとってはお伽話のような世界だろう? 今日はもう暗いから、似たようなものだと思えばいい」
「それなら、わかるかも。去年、おとしとり? の日に、初めて十二時まで起きていられたの。その後、すぐ寝ちゃったけど、ドキドキもワクワクも、両方しました」
「うん。そしてそういうときこそ、気をつけないといけないんだ。事故に出くわしたり、迷子にならないよう」
神隠しに遭わないよう。
おじいさんはそう言うと、影になった手を穏やかに横に振る。それで詩織も今度こそ傘を広げて、詠士の手を引っ張った。
「行こう、詠士」
「……」
しかし詠士はまだ困ったような顔をして、おじいさんと病院を見上げている。
「詠士」
ぐい、とちょっと強めに手を引いても、詠士はまるで詩織のことを忘れてしまったかのように動こうとしない。どうして、と詩織はちょっとだけ口を尖らせた。
「詠士!」
「詩織……」
少し責める口調で名前を呼べば、詠士はまだ困り顔で、ゆっくりと視線を詩織に向ける。
「……おとぎばなしみたい」
「そうだね。でも、君は真夜中の世界にドキドキしたり、ワクワクしたりしないかい? 君達が眠っている間の世界は、きっと君達にとってはお伽話のような世界だろう? 今日はもう暗いから、似たようなものだと思えばいい」
「それなら、わかるかも。去年、おとしとり? の日に、初めて十二時まで起きていられたの。その後、すぐ寝ちゃったけど、ドキドキもワクワクも、両方しました」
「うん。そしてそういうときこそ、気をつけないといけないんだ。事故に出くわしたり、迷子にならないよう」
神隠しに遭わないよう。
おじいさんはそう言うと、影になった手を穏やかに横に振る。それで詩織も今度こそ傘を広げて、詠士の手を引っ張った。
「行こう、詠士」
「……」
しかし詠士はまだ困ったような顔をして、おじいさんと病院を見上げている。
「詠士」
ぐい、とちょっと強めに手を引いても、詠士はまるで詩織のことを忘れてしまったかのように動こうとしない。どうして、と詩織はちょっとだけ口を尖らせた。
「詠士!」
「詩織……」
少し責める口調で名前を呼べば、詠士はまだ困り顔で、ゆっくりと視線を詩織に向ける。