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恋いろ神代記~神語の細~(おしらせあり)
第4章 傘爺
「詠士──!」
生まれたときから一緒だった片割れは、もう自分の知る家族ではない。瞬間的にそう思って、けれどそれを否定するように詩織は慌てて頭を横に振る。
 何が起きているかは分からない。──ただ一つ分かったことは、今、自分が何かを為さなければ、詠士が離れていってしまうということ。
(いやだ。そんなの、絶対にいやだ)
いつだって一緒だった双子の片割れ。きっと生まれてくる前から一緒だった。
 生まれてから最初にお母さんとお父さんが結んでくれた絆は、名前。一人が詩を織り、もう一人がそれを詠じ──そうして人生という物語を共に二人で紡いでいけるようにと、二人で一つの名前を付けてくれた。宿題の作文で、それをみんなの前で読み上げるのは緊張したけれど、そんな特別な絆を語ることができたのは誇りだった。二人してそれぞれの先生に褒められて、そのことを晩ごはんの時に話したら、お母さんもお父さんもすごく喜んでくれた。
 大切な、家族とのひととき。温かな時間。
 それなのに、それなのに──それがたったの一年生ぽっちで終わり? いやだ。そんなの、絶対にいやだ!
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