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恋いろ神代記~神語の細~(おしらせあり)
第4章 傘爺
ランドセルのふたをちゃんと閉めていなかったのか、水たまりだらけのアスファルトに散乱するノートや教科書、クーピー。それに気付いた持ち主は、面倒くさそうにしゃがんで一つ一つ拾い始める。
「あ~、教科書ふにゃふにゃになる~。あ、手ェ擦りむいてた。詩織、急に引っ張るんだもんなあ」
「だって……! だって、詠士が、悪いんでしょ!? 詠士がっ……おじいさんについて、病院にっ……病院……あ、あれ?」
半ば泣き叫ぶように声を吐き出し、勢いよく詠士の背後を指差した詩織はそこではたと動きを止める。
 幾分か弱まった雨脚。その向こうに広がっていたのは、いつも通っている通学路の風景そのものだった。変わった形の屋根のお家や、実のなる木があるお家は、入学したての頃は目印だった。でも今はもう、見慣れた景色。
 詠士は一度、指差された方を振り向きかけ、しかしそれよりも先に詩織の異変に気付き、笑った。
「病院って大げさだな。擦りむいただけだって」
「……え? 待って……なに言ってるの? 今、あたしたち、病院にいたじゃない。いたよね?」
「え? 病院? なんで?」
「なんでって……だから、だから、──そう、傘爺! 傘爺を見つけて、その後を追って──」
「は!? ちょっ……詩織、大丈夫か? 転んだとき、頭ぶつけた?」
「はあ!? なんで──なんで?」
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