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恋いろ神代記~神語の細~(おしらせあり)
第4章 傘爺
頭が真っ白になってぐちゃぐちゃになる。けれどそれ以上に安心もして、自分でもよく分からない涙がぼろぼろ溢れてきた。
 泣きながら、なんとか今あったことを詠士に話してみたが、詠士はその間のことを何も覚えていなかった。
 物語に出てくるようなおばあちゃん。名前の読めなかった病院や、初めてくぐった回転扉。古い町並み。赤信号の横断歩道。見知らぬセーラー服のお姉さん。あいあいがさ。だらりとしたコートにもっさりとしたマフラーを巻いた、傘爺。
 詠士自身は、二人で通学路を分け合って歩いていたことや傘爺の話を聞いたことは覚えていて、でもそのとき急に後ろから詩織に大声で呼ばれ、ものすごい力で引っ張られたのだという。
 二人で飴の確認もした。
 ない。
 でもその代わりに、詠士の傘だけがすぐ隣の塀に掛けられていて、詠士も何がなんだか分からないような顔で背伸びをしてそれを取った。
「俺たちが通学路半分こして歩いてたから、世界も半分に分かれちゃったのかな?」
「わかんないよ……でもあたし、詠士と離ればなれになるのがイヤで、一生懸命、追いかけたから……捕まえてよかった……。帰ってきて、よかったぁ……!」
「俺はずっと一緒にいるって! だからさ、もう泣くなよ」
「今は嬉しいの!」
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