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恋いろ神代記~神語の細~(おしらせあり)
第4章 傘爺
お互いにもうびしょ濡れで雨か涙か区別もつかなかったが、詩織はポケットからハンカチを取り出してゴシゴシと顔を拭く。それから詠士がすべてをランドセルに詰め直したところで、もう一度おそろいの傘を広げた。
 時間は分からなかったが、道沿いにある街灯にはまだ明かりが入っていなかった。今度はアスファルトも水たまりも踏み付けて歩き出せば、詠士が笑った。
「さっきの話、詩織はそのじいちゃんが言ったことなんも守ってないよな。全部すっ飛ばして、帰ってきちゃったんだ」
「夢中だったの」
「知ってる。詩織っていつもは大人しいけど、時々すっげえ怖くなるときあるもんな。さっきも泣いたり怒ったりワケわかんなかったし、爆発っていうか。だからもっと、自信持っていいと思う!」
「爆発って……」
言葉選びはいまいちだったが、心から何かを褒めてくれているのも分かって、詩織も笑い返す。いつもと同じ、詠士だった。
 道すがら、今日あったことをお父さんとお母さんにどう話そうか相談。でも学校の友達には、絶対に言わないことを約束した。
 おじいさんやおばあちゃんが持ち続けていた何か寂しくて優しいものは、彼らが存在する場所だけに閉じ込めておいた方がいいような気が、詩織にはしたのだった。

 そしてそんな話がまとまる頃には、我が家の姿も見えてきた。
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