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恋いろ神代記~神語の細~(おしらせあり)
第4章 傘爺
そんなに時間は経っていないはずなのに──と思って、ふといつもと違う音楽であることに気付く。
遠き山に、日が落ちて。
「なあ詩織ー、もう行こうぜ。こないだも寄り道バレてお母さんに怒られたし、俺お腹すいたー」
「あ、うん。お巡りさん、ありがとうございました」
「日も長くなってきたけど、心配だから途中まで一緒に行こうか。あんまり通学路破りすると、先生にも言わないといけなくなっちゃうからもうダメだよ。遅くなるとお母さんやお父さんも心配するから、おでかけは一度お家に帰ってからね」
「はーい。──なんかお巡りさん、お母さんみたいだな」
「もう、詠士! ……ごめんなさい。でも今日で、本当におしまいだから」
少女の大きな目が、再び私の姿を捉える。
……ごめんなさい、と。
どこか憂いを帯びた、真黒い瞳と、微笑み。
けれど若草色のランドセルを背負った少年は、こちらを見ることもなく少女の手を引き、女性警官と何事かを話し始めてしまった。
少年は、警官の持つ無線に興味津々らしい。途中まで親御さんに迎えにきてもらう話になって、三人揃って歩き始めると、その楽しそうな声も少しずつ遠ざかっていってしまった。
遠き山に、日が落ちて。
「なあ詩織ー、もう行こうぜ。こないだも寄り道バレてお母さんに怒られたし、俺お腹すいたー」
「あ、うん。お巡りさん、ありがとうございました」
「日も長くなってきたけど、心配だから途中まで一緒に行こうか。あんまり通学路破りすると、先生にも言わないといけなくなっちゃうからもうダメだよ。遅くなるとお母さんやお父さんも心配するから、おでかけは一度お家に帰ってからね」
「はーい。──なんかお巡りさん、お母さんみたいだな」
「もう、詠士! ……ごめんなさい。でも今日で、本当におしまいだから」
少女の大きな目が、再び私の姿を捉える。
……ごめんなさい、と。
どこか憂いを帯びた、真黒い瞳と、微笑み。
けれど若草色のランドセルを背負った少年は、こちらを見ることもなく少女の手を引き、女性警官と何事かを話し始めてしまった。
少年は、警官の持つ無線に興味津々らしい。途中まで親御さんに迎えにきてもらう話になって、三人揃って歩き始めると、その楽しそうな声も少しずつ遠ざかっていってしまった。