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恋いろ神代記~神語の細~(おしらせあり)
第4章 傘爺
「……」
そして一人その場に残された私は、いつかどこかで見たような、幼い少女の眼差しにただ立ちすくむ。
 幼い憐憫と同情。しかし今はそれだけでもなく、確固たる何かを必死に報せようと、自身が持つまだ少なすぎる言葉を巡らせ、含ませている。
 ……ごめんなさい?
 彼女は私に、何を詫びていたのだろう。何を謝ることがあったのだろう。彼女は、私を知っている? いや──まさか、娘のことを知っている? そんなはずはない。歳も離れている。だから──だからそうでなければ、娘の友人の子供さん? いや、まさか、娘の。娘の?
 それを一度でもあの少女に問いたくて、その後を追おうと数歩を慌てて踏み出したが、手にした傘の先が飛び石に引っかかり、無様に転んでしまった。
 老いた手足から体に奔(はし)る、痛みを帯びた衝撃は、若い頃のものより芯を侵す。
 惨めだった。
 やっと……やっと、何かに手が届くかもしれなかったのに。私は、私はまた──
「……」
手が土と雑草を食む。もはや涙が滲むことすらなかったが、羞恥と悔恨に歯を噛みのろのろと立ち上がり、着いた手や膝の痛みに耐えて砂を払う。
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