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恋いろ神代記~神語の細~(おしらせあり)
第1章 初髪、初鏡
「君達はまだ初いねえ」
一部始終を傍観していた日嗣は、呆れたようにしっしと初瀬を追い払うと慌てふためく神依を火鉢の方に招く。神依が示されるままぺたりと座れば、その前に丁寧に初瀬が座した。
日嗣が言い淀んでいたこと、わざわざ念押しのようにむぎゅっと抱きしめられたことの理由がようやく理解できた神依は、気恥ずかしさから意味無く髪を撫で付け初瀬を窺う。
「えっと、えーと……初瀬様はどうしてそんな格好を?」
「そりゃ今日の奥社行事の主役は僕だもん。僕も一緒に行くんだよ」
「えっ、そうだったんですか!?」
「そだよ。今日の神事はオマケみたいなもので、本命はその後の新年会だからさ~。綺麗なかっこした巫女に囲まれて、覡と賭け事をして騒いで遊んだり──三が日くらいは、みんなも羽目を外さないとね」
「そ、それは……すごく想像できる光景ですね。……賑やかというか」
もはやその光景は神依の頭の中では乱痴気騒ぎでしかないが、確かに日々の何事もない生活、慣習に則った暮らしの中では、そういう特別な時も必要なのかもしれなかった。
初瀬は頷いて続ける。
「それで元日に僕が降ったお家の巫覡は、幸姫、幸臣として僕の側に侍ることが許される」
一部始終を傍観していた日嗣は、呆れたようにしっしと初瀬を追い払うと慌てふためく神依を火鉢の方に招く。神依が示されるままぺたりと座れば、その前に丁寧に初瀬が座した。
日嗣が言い淀んでいたこと、わざわざ念押しのようにむぎゅっと抱きしめられたことの理由がようやく理解できた神依は、気恥ずかしさから意味無く髪を撫で付け初瀬を窺う。
「えっと、えーと……初瀬様はどうしてそんな格好を?」
「そりゃ今日の奥社行事の主役は僕だもん。僕も一緒に行くんだよ」
「えっ、そうだったんですか!?」
「そだよ。今日の神事はオマケみたいなもので、本命はその後の新年会だからさ~。綺麗なかっこした巫女に囲まれて、覡と賭け事をして騒いで遊んだり──三が日くらいは、みんなも羽目を外さないとね」
「そ、それは……すごく想像できる光景ですね。……賑やかというか」
もはやその光景は神依の頭の中では乱痴気騒ぎでしかないが、確かに日々の何事もない生活、慣習に則った暮らしの中では、そういう特別な時も必要なのかもしれなかった。
初瀬は頷いて続ける。
「それで元日に僕が降ったお家の巫覡は、幸姫、幸臣として僕の側に侍ることが許される」