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恋いろ神代記~神語の細~(おしらせあり)
第1章 初髪、初鏡
 膝の上で握りこぶしを作り腕を突っ張っている神依に、初瀬が先程のように優しく頬を抱き、流れる髪を耳の後ろに掛ければ今度はそれを日嗣がすくう。日嗣のその手にも神依の明らかな緊張が伝わってきて、苦い笑みがこぼれた。
「そんなに顔をひきつらせていると、笑った時に化粧が割れるぞ。力を抜け」
「む、無理です……」
冗談混じりにさらっと失礼なことを言われた気もするが、今の神依にはそれを受け流す余裕も無い。
「でも、どうして日嗣様と初瀬様が? 禊は?」
「そりゃあ特別な日だからね。君の新年の“初めて”を、何も禊ばかりに味わわせることもない。一つくらい、僕が貰ってもいいでしょう? 綺麗にしてあげるから──」
「ひゃっ!?」
言い様に、丸みを帯びたふわふわの化粧筆で首筋を撫でられた神依は、先程の緊張を一気に吹き飛ばされて日嗣の体に倒れ込む。
 「お前は何をしているんだ……」
「いいじゃん、余分な力抜けたみたいだし」
「よ、よくないです!」
日嗣の手を借りて体を起こした神依は頬を紅潮させ、それでも正座を止めて足を崩して座り直した。脱力しただけと言えなくもないが、確かに緊張の糸はぷつりと途切れてしまった。
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