- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
恋いろ神代記~神語の細~(おしらせあり)
第1章 初髪、初鏡
「……本当に綺麗にしてくれますか?」
「もちろん。君は最初から綺麗だったけどね」
怒るつもりも無いが、ちょっとだけ拗ねた顔を作ってみせれば、初瀬もまたちょっとの悪戯に笑う。
「……とか、日嗣は言ってくれないでしょう?」
「そんなことないですよ」
そうして互いに、笑い混じりの視線を正面から交わせば、背後では日嗣が渋い顔をしてそれに続けた。
「いいから口より手を動かせ。お前も……そのまま大人しくしていろ」
「はーい」
「君も大変だねぇ」
照れ隠しのようにさかさかと髪をとかし始める日嗣に、初瀬も先程練った粉を指先ですくい、ちょんと神依の鼻先にくっ付ける。
毎日温泉に浸かっているおかげか、吸い付くような玉の肌。それがほとんど蕾のまま、たった一柱の男神にしか与えられないのも……何とも勿体ない。勿体ないが、きっと、いずれは求めることすら許されなくなるのだろう。
前髪を避ければ、まつげをかすめる感触に瞼が閉じられる。口付けを求められているようにさえ見えたが、悪戯は辞めた。
「……」
そして言われた通り、手を動かし始めれば……部屋の中から、次第に音が消えていく。
「もちろん。君は最初から綺麗だったけどね」
怒るつもりも無いが、ちょっとだけ拗ねた顔を作ってみせれば、初瀬もまたちょっとの悪戯に笑う。
「……とか、日嗣は言ってくれないでしょう?」
「そんなことないですよ」
そうして互いに、笑い混じりの視線を正面から交わせば、背後では日嗣が渋い顔をしてそれに続けた。
「いいから口より手を動かせ。お前も……そのまま大人しくしていろ」
「はーい」
「君も大変だねぇ」
照れ隠しのようにさかさかと髪をとかし始める日嗣に、初瀬も先程練った粉を指先ですくい、ちょんと神依の鼻先にくっ付ける。
毎日温泉に浸かっているおかげか、吸い付くような玉の肌。それがほとんど蕾のまま、たった一柱の男神にしか与えられないのも……何とも勿体ない。勿体ないが、きっと、いずれは求めることすら許されなくなるのだろう。
前髪を避ければ、まつげをかすめる感触に瞼が閉じられる。口付けを求められているようにさえ見えたが、悪戯は辞めた。
「……」
そして言われた通り、手を動かし始めれば……部屋の中から、次第に音が消えていく。