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恋いろ神代記~神語の細~(おしらせあり)
第2章 桂楫
 そして菓子を貰って以来、九ノ弟はその雛に度々声を掛けられるようになって……その下手くそな生き方を、羨ましく思えるようになった。
 生き方が下手というのは結局、優しいということなのだ。
 だからこんな、祟られた巫女の童にまで気を遣って話し掛けてくれる。とはいえそれがどれほど九ノ弟に取って救われたか──。
 一日を暗闇の中で過ごす九ノ兄にすら、申し訳なく感じた。
 だからそれから少し経って、もう話し相手がこの雛しか居なくなった頃。
「──花?」
「うん……」
九ノ弟は自身の巫女……優沙に何が起きたのか、自然と喋り始めていた。



 そう、事の発端は“花”だった。優沙と九ノ兄、九ノ弟は、進貢の広場から程近い、比較的人家が密集する地域に住んでいた。
 それは優沙が本来は明るく社交的な性格であったためだし、事実奥社から降ってからもすぐに淡島の巫女らと馴染んだという。
 おしゃれが好きで、お喋りも好きで、そんな普通の──少女だった。だから昼間は仲間の巫女らと過ごし、夜は神々と逢瀬を重ね──。
 優沙は姐さん巫女から芸事を習うのも好きだったから、体を重ねる以外にも歌舞で神々を楽しませ、それはそれは可愛がられていた。
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