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恋いろ神代記~神語の細~(おしらせあり)
第2章 桂楫
だから九ノ兄も九ノ弟も何の不安も無く、毎日が楽しかった。このままの毎日がずっと続いて、ゆくゆくはいずれかの神に召し上げられて、良い生を歩むのだろうと思っていた。
「心配しないで、そうなったら禊と童も一緒に連れてくから。それを許してくれない神様なんて、私絶対に選ばないわ!」
それがその頃の優沙の口癖で、優沙はそれを通いに来る神々にも臆面無く宣っていた。
良い巫女さんだったんだな、と言われて、九ノ弟はそれを思い出したように「うん」と答える。
それが──それがどうして、こんなことになってしまったのか。
──プツリ、と。
それは、優沙が一本の花を手折ったことから始まった。
きっかけは何だったのか、今でも思い出せない。綺麗だったから摘んだ、とか、薬や染料にするから、とか……そういう明確な理由があった訳ではない。
本当に、何ならお喋りの合間の手遊びくらいの感覚で、優沙はその花を摘んで、プチ、プチ……と花弁を千切って遊んでいた。
その時、
「──っ!」
「どうしたの?」
優沙の正面に居た巫女が、その顔色を一気に変えて息を呑んだ。
「心配しないで、そうなったら禊と童も一緒に連れてくから。それを許してくれない神様なんて、私絶対に選ばないわ!」
それがその頃の優沙の口癖で、優沙はそれを通いに来る神々にも臆面無く宣っていた。
良い巫女さんだったんだな、と言われて、九ノ弟はそれを思い出したように「うん」と答える。
それが──それがどうして、こんなことになってしまったのか。
──プツリ、と。
それは、優沙が一本の花を手折ったことから始まった。
きっかけは何だったのか、今でも思い出せない。綺麗だったから摘んだ、とか、薬や染料にするから、とか……そういう明確な理由があった訳ではない。
本当に、何ならお喋りの合間の手遊びくらいの感覚で、優沙はその花を摘んで、プチ、プチ……と花弁を千切って遊んでいた。
その時、
「──っ!」
「どうしたの?」
優沙の正面に居た巫女が、その顔色を一気に変えて息を呑んだ。