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恋いろ神代記~神語の細~(おしらせあり)
第2章 桂楫
それにつられて皆が優沙の手元を見ると、むしられた花弁があった場所からどろどろと赤黒い……経血のようなものが滲み、優沙の指を、手を伝っている。
それは茎の方からも染み出し、優沙の手は刃を握っているかのように血塗れになっていた。
しかしそれより何より皆が恐れたのは、
「ゆ、優沙……。それ」
「え? なに?」
「何ってあんた……」
それが優沙にだけ見えていなかったこと。
呆然と手元を見つめる仲間達に、優沙は可笑しそうに「変なの」と笑うと、それをぽいと路端に放り投げた。目で追えば、それは胞子のような赤黒い燐粉を散らし崩れて消えていく。
そして、数日後。
「──……え?」
自宅に戻った優沙と禊達が見たのは、庭一面を埋め尽くす深紅の花だった。
*
それは元々あった庭木や池までをも侵食し、生気を喰らうように根を張り水を濁らせ木々を枯らせていった。そして昼夜問わずむせ返るような芳香を放ち、優沙の家はその臭いで溢れ返った。
頭痛がする程のその──甘い、という言葉では足りない程に甘い臭いに優沙は苛立ち、まず九ノ兄に全て刈らせて庭の隅で全て焼かせた。
それは茎の方からも染み出し、優沙の手は刃を握っているかのように血塗れになっていた。
しかしそれより何より皆が恐れたのは、
「ゆ、優沙……。それ」
「え? なに?」
「何ってあんた……」
それが優沙にだけ見えていなかったこと。
呆然と手元を見つめる仲間達に、優沙は可笑しそうに「変なの」と笑うと、それをぽいと路端に放り投げた。目で追えば、それは胞子のような赤黒い燐粉を散らし崩れて消えていく。
そして、数日後。
「──……え?」
自宅に戻った優沙と禊達が見たのは、庭一面を埋め尽くす深紅の花だった。
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それは元々あった庭木や池までをも侵食し、生気を喰らうように根を張り水を濁らせ木々を枯らせていった。そして昼夜問わずむせ返るような芳香を放ち、優沙の家はその臭いで溢れ返った。
頭痛がする程のその──甘い、という言葉では足りない程に甘い臭いに優沙は苛立ち、まず九ノ兄に全て刈らせて庭の隅で全て焼かせた。