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恋いろ神代記~神語の細~(おしらせあり)
第2章 桂楫
 しかし翌日にはその灰からまた花が生え、その地からは止めどなく赤黒い血のようなものが湧き出し池を埋めてしまう。
 更に翌日にはその池から花が満ち満ちて咲き、それは日を追うごとに邸(やしき)の方に近付いてくる。
 そして優沙が近くを通る度に、プツリ、と。
 自らの茎を折り、或いは首をもぐように花を落とし、何かを訴えてくるのだ。
 プツリ、プツリ、プツリ。
 ぽとり、ぽとり、ぽとり。
それはまるで針と、先端に傷付けられた皮膚から滴る鮮血の形。その音と光景に、優沙は次第に苛まれていった。
 神々の通いは途絶え、夜の暗闇と音に過敏になった。寝ていても、花は夢の中にまで咲き溢れる。
 やがて夢の中の花は、その姿を着飾った優沙の姿に変えては──プチ、プチと。またプツリ、と。
 その装飾をむしり、或いは四肢を、胴を、首をひしゃげさせ、赤黒い粘液に変えていった。
「──嫌あぁぁっ!! 禊──禊っ!!」
「優沙様!」
そうして幾度となく恐怖に目を覚まし、寝ることさえ満足にできなくなった優沙は奥社に走り、洞主に助けを求めた。
 洞主は卜占を重ね、それが端神の祟りであったことを突き止めたのだが、その頃の優沙にはもう自身が千切った花の記憶など無く、その理不尽さにますます憤りの念を濃くするばかりだった。
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