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恋いろ神代記~神語の細~(おしらせあり)
第2章 桂楫
「花なんて──花なんてみんな摘んでいるじゃない! 進貢でだって、庭先でだって! なのにどうして私ばっかり──!!」
「気持ちは分かるが、しかしそなたは神に仕える巫女であった。そして淡島に在る名も無き神もまた、神であることに変わりはない。……分かるであろ?」
それでも洞主はやつれた娘を見て体を労り、祓(はらえ)の儀を行ってくれたのだが、それも効果は数日で消えてしまう。
挙げ句の果てに、三度目の祓に向かう間際──優沙は庭先で大量の蜂に襲われ、身体のあちこちを刺され数日間寝込んでしまったのだ。
そして目を覚ましたとき右腕にはその傷を中心にした赤黒い印が刻まれており、日々の生活すらままならないほどの痛みと焦燥に駆られるようになった。
痒さに皮膚を掻きむしっては血を滲ませ、またじくじくと浮かぶ水疱を破っては痛みに泣きじゃくる。
どこかの隙間から入り込んだ蜂や玻璃に止まる蜂に声を上げては怯え、以来優沙は何かに取り憑かれたように隙間を紙や粘土で埋め、外が見えないように布を張ってしまった。
そして今も、それが続いている。
*
「……」
「あ……ごめん。暗い話して」
不意に黙り込んでしまった雛に、九ノ弟は気まずそうに目を伏せる。
「気持ちは分かるが、しかしそなたは神に仕える巫女であった。そして淡島に在る名も無き神もまた、神であることに変わりはない。……分かるであろ?」
それでも洞主はやつれた娘を見て体を労り、祓(はらえ)の儀を行ってくれたのだが、それも効果は数日で消えてしまう。
挙げ句の果てに、三度目の祓に向かう間際──優沙は庭先で大量の蜂に襲われ、身体のあちこちを刺され数日間寝込んでしまったのだ。
そして目を覚ましたとき右腕にはその傷を中心にした赤黒い印が刻まれており、日々の生活すらままならないほどの痛みと焦燥に駆られるようになった。
痒さに皮膚を掻きむしっては血を滲ませ、またじくじくと浮かぶ水疱を破っては痛みに泣きじゃくる。
どこかの隙間から入り込んだ蜂や玻璃に止まる蜂に声を上げては怯え、以来優沙は何かに取り憑かれたように隙間を紙や粘土で埋め、外が見えないように布を張ってしまった。
そして今も、それが続いている。
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「……」
「あ……ごめん。暗い話して」
不意に黙り込んでしまった雛に、九ノ弟は気まずそうに目を伏せる。