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恋いろ神代記~神語の細~(おしらせあり)
第2章 桂楫
 いつも、優沙は“感覚”であの神様にはこの花、と決めていたが、巫女ではない自分には分かりようもない。
 ただ一本、こんな時間にも関わらず月と同じ色をした花を咲かせる植物を見付け、九ノ弟は自然とそれを手折り、また花を一つだけ懐に入れ広場の中心にある社へと向かった。そして地に額を擦り付けては気まぐれな神の慈悲を乞う。
 後から九ノ兄にその白い花を見せれば、それは夜に花を咲かせ翌日の昼には萎んでしまう──待宵草。別名、月見草だと教えられた。
 夜の神を求めるに、それはなんという幸運な巡り合わせか。
 だから童は翌日からもずっと、その花を摘んでは捧げ、摘んでは捧げを繰り返した。
「優沙様──優沙様はずっと僕にも優しくしてくれたから。また前みたいにお日様の下で明るくお喋りできるように、頑張るから──だから、安心して」
「童……」
やがて夜毎、無事に進貢を終えて戻ってくる童を見るに連れ優沙は少しずつその振る舞いを変えていった。
 まだ外に出るのは怖い。だから代わりにと自身の花柄の着物を切り、或いは花が模され、描かれた装飾品をばらし、童に預けるようになった。九ノ弟はそれを花と共に捧げた。
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