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恋いろ神代記~神語の細~(おしらせあり)
第2章 桂楫
そしてそれも屑ばかりになった頃、徐々に──ようやく、優沙は罪悪感のようなものを心のどこかで持つようになった。
自分のしたことのせいで禊は不自由な暮らしを強いられ、童は昼も夜も寝る間を削って尽くしてくれている。
(私は何をしているんだろう……)
昼も夜も分からない闇の中で、悪夢に脅え束の間の眠りを繰り返し、箸すら持てなくなった右手をぶらりと伸ばし、匙さえ上手く使えない左手に苛立ち禊に当たり、或いは泣きすがって甘え、また眠りにつく。
これは……生きていると言えるのだろうか。否、それはいい。そんなことより問題だったのは、自分の心の在り方だった。
無気力に、ただ現状全てを他のもののせいにして、自分を想ってくれる近しいものに当たり散らして。
(私……馬鹿みたい)
童が言う私の優しさなど、その名の通り……沙(すな)のように軽くて頼りなくて、塵のようなものだったのだ。
優沙はごめんなさいと呟き、動かぬ右手を動かし童を抱きしめた。動かないはずの手は動いてくれた。そしてこんな赤黒い手でも童は嫌がらない。むしろそれを喜んでくれて、ようやく、申し訳なかったと思った。
自分のしたことのせいで禊は不自由な暮らしを強いられ、童は昼も夜も寝る間を削って尽くしてくれている。
(私は何をしているんだろう……)
昼も夜も分からない闇の中で、悪夢に脅え束の間の眠りを繰り返し、箸すら持てなくなった右手をぶらりと伸ばし、匙さえ上手く使えない左手に苛立ち禊に当たり、或いは泣きすがって甘え、また眠りにつく。
これは……生きていると言えるのだろうか。否、それはいい。そんなことより問題だったのは、自分の心の在り方だった。
無気力に、ただ現状全てを他のもののせいにして、自分を想ってくれる近しいものに当たり散らして。
(私……馬鹿みたい)
童が言う私の優しさなど、その名の通り……沙(すな)のように軽くて頼りなくて、塵のようなものだったのだ。
優沙はごめんなさいと呟き、動かぬ右手を動かし童を抱きしめた。動かないはずの手は動いてくれた。そしてこんな赤黒い手でも童は嫌がらない。むしろそれを喜んでくれて、ようやく、申し訳なかったと思った。