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恋いろ神代記~神語の細~(おしらせあり)
第2章 桂楫
 そして自身の中にあった傲慢さと無神経さに気付いた優沙は、神々にするように禊と童に頭を下げ、それでも良ければ一緒についてきて欲しいと願い──ついに、外に出る決断をした。



 夜に見るあの花は、穏やかにさやさやと風に揺れていた。
 きっと優沙が手折った時もそうだったに違いない。優沙達と同じように朝花開き、季節の移り変わりと共に生き、道行く者を眺め、或いは巫女達のお喋りに混ざるようにその言葉に耳を傾けていたかもしれない。
 それを──
(ごめんなさい……)
優沙は毎夜そこを通る度に心の中でそう呟き、進貢の広場へと向かった。そして童がそうしたように、月の光を宿す純白の花を摘んでは捧げ、摘んでは捧げ……。
 家に帰ってからも、なるべく元の生活に戻るように紙や布を剥がし、土の塊を砕いていった。それは少しずつ少しずつだったが……しかしそれをしても、もう怖くはなかった。傍らには前以上に九ノ兄が在り、優沙を心身共に支えてくれた。
 その頃にはもう、優沙の体は右腕だけでなく胸や腹にまで爛れたような跡が広がっており、時もまた年を越えていたが、痛みや焦燥は以前ほど感じることは無かった。それは単に慣れかもしれないし、違うもののおかげかもしれなかった。
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