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恋いろ神代記~神語の細~(おしらせあり)
第2章 桂楫
 が、
「よかろう。……では、私がいいと言うまで笛でも琴でも延々と弾き続けよ。歌舞、楽の音は神を慰める。一度はもぐことすら考えた腕など、もはや惜しくはあるまい? 指が無くなったなら平で、平が無くなったなら手首で、手首が無くなったなら肘で。……それがお前にできるか?」
「……え……?」
やはり撫でるような声で問われたのは、あまりに……残酷で、凄惨な問い。
 「お──お待ち下さい……!」
思わず絶句した優沙に代わって、九ノ兄が震えた声を上げる。しかし月読はそれに冷酷とも言える視線で答え、それだけで九ノ兄を黙らせると優沙に再び向き直った。
「……巫女が愚かならば、禊も愚かか。いや……或いは逆か。無知なる水蛭子を育てるもまた、禊の領分。然ればそれは、卵と鶏を論ずるようなものだ」
「……」
あからさまに嘲るような月読の声音に、しかし優沙はそれでその神の真意を悟った。
 ──この神は、元より私など相手にしていない。
 それでも……否、これでも慈悲の欠片を与えてくれているのだ。
 それを理解できる程度には聡かった優沙は、ぐっと唇を噛みしめ、それから消え入りそうな声で呟く。
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