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恋いろ神代記~神語の細~(おしらせあり)
第2章 桂楫
 前はこんなにも大切にしていたのに。けれど、その楽しみはいつしか忘れ去ってしまっていた。楽器を保管してある部屋にももう長いこと立ち入っていない。なのに……なのに琴は、埃をかぶることもなく綺麗に手入れされていた。
 (……禊)
禊はきっと、ずっと信じてくれていたに違いない。自分が立ち直ることを信じて、待っていてくれたのだ。
 優沙はその愛しい臣を想い、月夜に照らされた己の赤黒くむくんだ指先を見、両手を弦の上へと運ぶ。
(──あ)
しかし自由が利かない右手は、たったそれだけのことで琴軋を取りこぼしてしまった。弦と弦の間にこつりと落ち、優沙は左手を添えながらもう一度拾い上げる。もうこの指先では、摘まむことさえ自分が思う何倍もの力が必要なようだった。
 「優沙様」
「……大丈夫よ。……ありがとう、童」
そんな時、怖じ気づく心に小さな手と声とが添えられて、きゅ、と道具を握らせてくれる。だから今度こそそれを手離さないよう力をこめれば、右手はやっと言うことを聞いてくれた。
 じっと心配そうに見つめてくる童を奥に戻らせ、優沙は一人庭と向かい合う。
 そして目を閉じて、……深呼吸。
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