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恋いろ神代記~神語の細~(おしらせあり)
第1章 初髪、初鏡
「……ついでに、俺の親族だ」
「え」
苦々しい声で日嗣にそう告げられた神依は、改めてその猫のように持ち上げられている男神を見上げる。
 自身と同じく、乱れて垂らされただけの黒髪と着物からは威厳の欠片も感じられず、へらっと笑って呑気に手を振る姿はどう見ても日嗣とは似ても似つかない。けれどもその目鼻立ちはやはり彼の一族に共通して、羨ましいくらいに整っていた。
(……目がぱっちりしてて、黒目おっきくて、仔猫みたい)
とにかくそれが神依の初瀬に対する第一印象だったのだが、反面、日嗣は猛禽類より鋭い瞳でその手に引っ掴んでいる大きな仔猫をねめつける。
 「それでお前は、ここで何をしているんだ」
「ええ? ひどいなあ日嗣、さっきそこの禊が言ってたじゃないか。今日は元日なんだから、今日くらいは僕がどこへ降ろうと自由でしょ?」
初瀬の物言いは間延びして、それもまた日嗣とは正反対のよう。禊とも猿彦とも違う、この初瀬という神は、神依が今まで接したことがない雰囲気の男だった。
 しかしそれにも呆れたように、日嗣は続ける。
「──だとしても、何故神依の布団に潜り込む必要があるんだ。その禊の言う加護を与えるにしても、お前の場合その神威の欠片をばらまけば勝手に餅に宿るだろう」
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