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恋いろ神代記~神語の細~(おしらせあり)
第2章 桂楫
 幻想、妄想──否、実際に今、庭に浮かんだその姿を本当に目の当たりにしたのかもしれない。もうその区別はつかなかったが、けれどもその女の子の姿を見た瞬間、反射のように涙が溢れ出した。
 毎日毎日寂しくて、けれど毎日毎日笑っていた女の子。自分達と同じように生き、ずっと側近くにいたのに、優沙には分からなかった。
 その日もすぐ隣にいたのに。すぐ足元に立っていたのに、なのに自分は──その子を千切った。千切って、むしって、ぽいと捨てた。
 (ごめんなさい……ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい)
優沙はぼろぼろとこぼれる涙を拭うこともせず、ただひたすらにその想いを音に織って風に託した。
 私のことも知ってくれていたのに。慕ってくれていたのに。ごめんなさい。ごめんなさい。
 もう、赦してほしいとは言いません。この爛れた身が、焦燥が、馬鹿な私への罰というなら……私は今巫女として、この身と心に受け入れます。
 けれど貴女は──貴女はどうか、また愛らしく、季節のうつろいと共に花開かせてくれませんか。私達の傍らで、咲いてはくれませんか。
 もしも出来ることならば……魂を鎮め、もう一度。今度こそ幸せな生を歩んでほしいと、今の私は思うのです。
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