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恋いろ神代記~神語の細~(おしらせあり)
第2章 桂楫
そしたら今度は、私もその手助けができるかもしれない。道野辺の貴女へ、微笑むことができるかもしれない。たくさんの音を、届けることができるかもしれない。そしたら、今度はきっと──。
「……っ」
ひくつく喉を、そこから絞り出される嗚咽の音を優沙は堪えて、震える右手で精一杯の音を鳴らす。
もう、自分でも聞くに耐えない音になっていた。割れた玻璃のように粉々で、めちゃくちゃで──、もう私のことなど覚えていないかもしれないが、琴を教えてくれた姐さん巫女が聞いたら、きっとすごく怒るだろうなと思った。
それでも、弾きたくて、伝えたくて──。
滲む視界にはもはや醜い手と琴しか映らず、優沙は必死になって弦をかき鳴らした。ぼたぼたと琴に落ち、滲みて色を変えるものにも構わず、その神にも通ずるという六絃の御琴に胸の内を託して必死に音を宙(そら)に顕した。
右手の感覚はもうない。なのに肘から下は小刻みに痙攣して、肩は油の切れたからくりのように軋んだ音を体内に発していた。
破れかぶれに強く動かしている訳ではない。ただ、もう──あれから時間が経ち過ぎていたのだと思う。やはり、自分が馬鹿だったのだ。
「……っ」
ひくつく喉を、そこから絞り出される嗚咽の音を優沙は堪えて、震える右手で精一杯の音を鳴らす。
もう、自分でも聞くに耐えない音になっていた。割れた玻璃のように粉々で、めちゃくちゃで──、もう私のことなど覚えていないかもしれないが、琴を教えてくれた姐さん巫女が聞いたら、きっとすごく怒るだろうなと思った。
それでも、弾きたくて、伝えたくて──。
滲む視界にはもはや醜い手と琴しか映らず、優沙は必死になって弦をかき鳴らした。ぼたぼたと琴に落ち、滲みて色を変えるものにも構わず、その神にも通ずるという六絃の御琴に胸の内を託して必死に音を宙(そら)に顕した。
右手の感覚はもうない。なのに肘から下は小刻みに痙攣して、肩は油の切れたからくりのように軋んだ音を体内に発していた。
破れかぶれに強く動かしている訳ではない。ただ、もう──あれから時間が経ち過ぎていたのだと思う。やはり、自分が馬鹿だったのだ。