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恋いろ神代記~神語の細~(おしらせあり)
第2章 桂楫


 「……」
そこで優沙はふと話すのを止め、もう冷めかけてしまった湯呑みを手に唇を湿らす。それから眼前の少女がぽかんとしたまま固まっているのに気付いて、くすりと笑んだ。
「──あなたもどうぞ。このお菓子、手作りなのよ。……あ、もしかして……甘いものは嫌い?」
「えっ……あ、いえ」
大好きです、と恥ずかしそうに呟いて慌てて楊枝を取る少女に、傍らに控えていた禊が謝辞を述べるように頭を下げる。その表情は優沙が離れ小島を訪ねた時から変わらず、無愛想で──頭を下げたとしても、その雰囲気には警戒心さえ含まれているような気がした。
「いやね、毒なんて入ってないわよ」
「優沙様!」
だからそれをからかうように言えば、後ろに在った自身の禊と童の方が慌てたように腰を浮かせる。毒という言葉に驚いたのか、んっと喉を詰まらせる少女に三人がかりでお茶を勧め、少女がほっと一息つけば、自身の禊は深々と頭を下げた。
「申し訳ありません──」
「いえ」
が、向かい合う禊の方は返事も至って簡素。これで会話をする気があるとしたら相当だ。
(でも、一の位を持って洞主様にお仕えしていたんだもの。……ただの禊ではないのよね)
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