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恋いろ神代記~神語の細~(おしらせあり)
第2章 桂楫
その言葉に、神依の目がまん丸に見開かれる。心なしか頬まで紅潮しているようで、それは、体の奥底からじんわりと沸き上がってくるような──無垢な喜びだった。
 神依もまた少しずつ少しずつ他の巫女達との関係を築き始めてはいたが、まだ日嗣ほどには活発に混ざれていない。
 特に良くしてくれている舞巫女達も、奥社に詰めている以上やはり他の巫女達とは別格であり、日常的に稽古や神事を控えている。顔を出せば喜ばしく迎えてくれたが、忙しい最中に出会(でくわ)すと申し訳なくも思ってしまうし、一人の帰り道はいろいろと思い煩い、余計に寂しく感じてしまう。
 「ほら、行きましょう!」
「あ……はい!」
だから神依の変化に気付いた優沙も、殊更に明るい声でそれを促す。隣の気難しそうな禊が物申す前に手を取って走り出せば、跳び石を渡り終えた頃、ようやく背後の男達も歩き始めていた。

 そうして優沙は神依と禊を自宅に招き、九ノ兄、九ノ弟とそれぞれの言葉を接ぎながら、もうずっと昔に起きた自ららの物語を二人に語った。
 浅はかな過ち故にその身を焼き、花や蜂を恐れ暗闇に引きこもっていたこと。小さな雛に導かれ、夜の闇に飛び出したこと。切々たる祈りと、降臨する神。そして……。
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