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恋いろ神代記~神語の細~(おしらせあり)
第2章 桂楫
右手から庭の方へ目を遣れば、今日も花の群れは穏やかに秋風に揺れている。今は種子も終わりの季節だが、まだちらほらと赤い花弁も残っていた。そしてその向こうには、もう苔むして趣を増した、石造りの小さな祠がある。
「あの……もしかして、あの祠……」
ふと遠慮がちな声が横から聞こえ、優沙は再び視線を戻した。少女は同じように祠を眺めていて、この巫女の目には何がどう見えているのだろうと、少しだけ羨ましくも感じてしまう。
「……ええ、月読様がいらしてすぐ、花の神の御霊をお祭りさせていただいたの。祠はああしてうちにあるけど、御神体は日を決めてこの集落の家を回るようになってるのよ。それで受け持つ家は、その間たくさんのおもてなしをするの。それが、私があの時に視た花の神の望みだったから」
「そうなんですね。でも……それならきっと今は、花の女神様も楽しくて嬉しいと思います。種に託していた夢が叶って、安心して戻れるお家もできて。……温かく迎えてくれる人達がいる家は、本当に心がほっとするから」
「ふふ。だからあなたも、あの離れ小島に戻ることができたのね。……私達の祈りも、そんな温かい家になってくれているかしら」
「はい」
「あの……もしかして、あの祠……」
ふと遠慮がちな声が横から聞こえ、優沙は再び視線を戻した。少女は同じように祠を眺めていて、この巫女の目には何がどう見えているのだろうと、少しだけ羨ましくも感じてしまう。
「……ええ、月読様がいらしてすぐ、花の神の御霊をお祭りさせていただいたの。祠はああしてうちにあるけど、御神体は日を決めてこの集落の家を回るようになってるのよ。それで受け持つ家は、その間たくさんのおもてなしをするの。それが、私があの時に視た花の神の望みだったから」
「そうなんですね。でも……それならきっと今は、花の女神様も楽しくて嬉しいと思います。種に託していた夢が叶って、安心して戻れるお家もできて。……温かく迎えてくれる人達がいる家は、本当に心がほっとするから」
「ふふ。だからあなたも、あの離れ小島に戻ることができたのね。……私達の祈りも、そんな温かい家になってくれているかしら」
「はい」