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恋いろ神代記~神語の細~(おしらせあり)
第2章 桂楫
神依がしっかりと頷けば、優沙とその僕達はどこか嬉しそうに笑んだ。
 そこにはもう何の憂いもないようで、神依の頬も自然と緩む。残った生菓子を食めば、たくさんあるからとおかわりを勧められた。お月様のようにころんとした、山吹色の素朴で優しい甘さのおやつ。
 と、その時──
「こんにちはー」
「あれ?」
耳慣れた子供の声が庭の向こうから聞こえてきて、神依は小首を傾げた。
「童?」
「書き置きだけ門に挟んで参りましたので──」
「えっ、うそ。一人で来たのかな。もう、まだ目が治ってないのに……」
「僕が参ります」
そう言って神依と禊を制し立ち上がったのは、今は話の中より幾分か成長している少年だった。優沙に降りかかった祟りを解くため、真っ先に闇夜に駆け出した少年。
 少年は穏やかな笑みを浮かべ、神依と禊に一礼すると部屋を後にする。
「──気付いた?」
「え?」
それを見送りながら声を潜ませる優沙に、神依はきょとんとした様子で応えた。優沙は悪戯を企むような目で神依と禊を交互に見遣り、続ける。
「あの子も昨日からずっと楽しみにしてたのよ。……喜んでいたわ、真実を見抜いてくれる大人がいたって」
「え? ……あ、ああー!」
「神依様……」
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