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恋いろ神代記~神語の細~(おしらせあり)
第3章 誓約
 待つ役割を得ていた者達に取っては、それくらいあの黄泉帰りは劇的だった。それこそ当の本人達以上に──。
 だからもう、娘を害する者は表立ってはいない。元より天津神の筆頭たる三貴子が赦し、国津神の長が庇護する娘を誰が害することができるだろう。誰が何をしても腹立たしく思う連中がいるのは仕方ないが、それは時に任す部分も大きい。
 聞く話では、ようやく──心安い友もできたという。禊や童共々、菓子を持ち寄っては互いの家を行き交いお喋りをしたり、その友は楽の心得があるというので、新たに楽器を習ったりしているのだという。
 良かった。本当に、良かった。
 「──まあなんだかんだ、お前も楽しそうで何よりだ。あの家はいつ行っても誰かしら居て賑やかだからな。そういうのは良い」
「そうだな……正直自分でも意外だが、帰る場所があるということがこんなに落ち着くものだとは思わなかった。お前とこんな話をするのも、妙に清々しい」
「約束だったからな。覚えてるか?」
「……言っておくが、俺は尻には敷かれてないぞ」
「ばーか、これからだよ。のろけ話がいつ愚痴になるか、見ものだな」
「……」
そんな日が果たして訪れるのか、今の日嗣には想像できない。
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