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恋いろ神代記~神語の細~(おしらせあり)
第3章 誓約
童は昼間久しぶりに玉造の方へ赴いており、邪魔にならぬようにと今日ばかりは日嗣もわきまえていた。
「そうは言っても、まだ危なっかしく見えるからな」
「なのかなぁ。だから兎神様も、俺がきっと落ちると思って、毎日跳び石の前まで迎えに来てくれるんだ」
それに頷くように、ぴょんぴょんと跳ねる桃色の兎の姿は愛らしい。
童は本人の心情とは裏腹に、未だに伍名の治療を受けている。小さな体に不似合いな大きな眼帯──という見た目も相まって、家の誰もがつい世話を焼きたくなってしまうようだった。
「そうだ。なら、肩車でもしてやろうか。それなら絶対に落ちない」
「子供扱いすんなよー!」
ふざけ半分で体を持ち上げようと腕を回せば、童は逃げるように身をよじり、件の跳び石をひょこひょこと渡っていく。日嗣と兎神はそれを一足跳びに追い、三人して竹林の小路まで辿り着けば、なお炊事の香りが濃く漂ってくるのが分かった。
それを辿るように小路を進み門をくぐると、ちょうど勝手口から庭へ出てくる自身の巫女と出くわす。
手には小さな木製の盆と、それを覗き込む子龍。季節の色で染められた、季節外れの稲穂の紋の襷を翻し、爪先に突っ掛けを引っかけて踊るように祠の方へと足を進める。
「そうは言っても、まだ危なっかしく見えるからな」
「なのかなぁ。だから兎神様も、俺がきっと落ちると思って、毎日跳び石の前まで迎えに来てくれるんだ」
それに頷くように、ぴょんぴょんと跳ねる桃色の兎の姿は愛らしい。
童は本人の心情とは裏腹に、未だに伍名の治療を受けている。小さな体に不似合いな大きな眼帯──という見た目も相まって、家の誰もがつい世話を焼きたくなってしまうようだった。
「そうだ。なら、肩車でもしてやろうか。それなら絶対に落ちない」
「子供扱いすんなよー!」
ふざけ半分で体を持ち上げようと腕を回せば、童は逃げるように身をよじり、件の跳び石をひょこひょこと渡っていく。日嗣と兎神はそれを一足跳びに追い、三人して竹林の小路まで辿り着けば、なお炊事の香りが濃く漂ってくるのが分かった。
それを辿るように小路を進み門をくぐると、ちょうど勝手口から庭へ出てくる自身の巫女と出くわす。
手には小さな木製の盆と、それを覗き込む子龍。季節の色で染められた、季節外れの稲穂の紋の襷を翻し、爪先に突っ掛けを引っかけて踊るように祠の方へと足を進める。