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恋いろ神代記~神語の細~(おしらせあり)
第3章 誓約
胸元で跳ねる柔らかな勾玉の玉飾りも、今のその巫女を形作るもの。
 「──神依」
「あっ、日嗣様。兎神様と童も、お帰りなさい!」
「ああ、……ただいま」
「ただいま、姉ちゃん」
その何気ない挨拶も、日嗣にはまだどことなくこそばゆい。けれども神依は気にした風もなく、足元に寄ってくる兎神にも笑いかける。
「兎神様の祠にも伺いますから、少し待っていて下さいね」
兎神は嬉しそうにこくこくと頷くと、住処のある竹林の方に再び跳ねていく。それを見送った神依はまず島の淵にある屋敷神の祠に向かうと、朝に置いた皿や盃を下げた。
 父を亡くし新たな屋敷神となった鼠英(そばな)は、やはり日嗣と同じように日々少しずつその神威を高めている。神依の、そして禊や童達の信頼は父・鼠軼と劣ることはない。
 それでも父に及ばない分は、あの蜘蛛神が手を貸し補っていた。猿彦には、竹林の小路の入口と小さな門に、大きな蜘蛛の巣が張られているのが視えるらしい。
 日嗣は神依に伝えていないが、いずれ神依を──否、神依を稲依(さより)として高天原に召し上げるときは、彼らにも正式に名を与え、人の姿にしてやりたいと思っていた。そうすれば、稲依に取っては最も信頼のおける臣となる。
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