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恋いろ神代記~神語の細~(おしらせあり)
第1章 初髪、初鏡
「うーん、じゃあ両方でお餅一つずつ! あと甘いの!」
「いいねえ。まだこの先、いろいろ期待できそうだなぁ」
その食べた分の餅がどの部分の身になるかはさておき、それをほくほくと美味しそうに食んでくれる姿は穀物神たる初瀬にもやはり心地好いものだった。
「やっぱり、お正月明けの女の子はふっくらしてる方がいいよねえ。あー、この子は楽しくて幸せなお正月過ごしてくれたんだーって分かって、僕も嬉しいし」
「ふっくら」
「そうそう。てことで、はいあーん。巫女は神様の言うことに従うものだよ」
「ん……」
神依は一応女心にふっくらという言葉の語感に悩みつつ、餡がたっぷり乗った栗きんとんを、口元に差し出されるままにパクリと食む。
「美味しい?」
「……」
悩む素振りをしつつ、細やかな誘惑を受け入れ楽しそうに、恥ずかしそうに笑んで頷く巫女は素直に可愛らしいと思える。愛玩用の小動物に似ている。
 ただその巫女を挟んだ向こう側から襲い来る無言の殺気だけがグサグサと心臓の辺りに突き刺さって、精神的にはよろしくない。ひとまず彼女が誘惑を飲み込むまでに四、五回殺された気がするが、それはそれで稀有な体験でもあった。
(あの日嗣がヤキモチとか……あと百年は思い出して笑えるなー)
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