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恋いろ神代記~神語の細~(おしらせあり)
第3章 誓約
 しかし、今の暮らしはまだ手放し難い。神依もまたそれを望み、淡島の巫女として日々神の前で頭を垂れ手を打っては、長閑な暮らしを送っていた。
 今も日嗣が見守る前で、神依は目をつむって小さな神にその信仰を捧げている。一日の出来事を思い出しながら、家中の者達の無事を感謝する。
 その祈りの姿は、とても愛おしい。愛おしいのだが──。
「兄ちゃん、もしかして妬いてる?」
「おい──」
こそりと図星を突かれて、日嗣は慌てて童を見遣るが童は素早く勝手口の方へ逃げていく。それに神依は笑いを噛み殺して、顔を上げた。
「もう──日嗣様も、待っていて下さいね。今日はちゃんと、ふかふかのご飯ですから!」
「それはほとんど、禊が作ったものだろう」
「ん……そりゃあ今はまだ、手伝ってもらってますけど。水加減や、時間の確認とか」
ちょっとは褒めて、と訴えてくるその拗ねたような瞳に、日嗣はふと笑い、指で髪をくしけずるように頭を撫でてやる。最初に比べれば、料理をする姿も随分さまになってきた。
「お前がそう言うなら、それは何よりの俺の力になる」
「……えへへ」
神依はきゅう、と身を縮めその顔をほころばせる。
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