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恋いろ神代記~神語の細~(おしらせあり)
第3章 誓約
ねだっておいて照れられるのは、日嗣の心にも甘噛みされたようなくすぐったい心地が残るのだが、それも──多分、幸せなことなのだろう。
 と、その時。見計らったかのように勝手口の方から禊の声がして、神依は今行く、と慌ててそれに応えた。まだ炊事の途中だったのだ。
「それじゃあ、私は蜘蛛神様と兎神様の方に行ってから戻ります」
「俺は一番後回しか」
わざとらしいため息混じりの声でぼやけば、神依は駆け出そうとした足を止める。
「ふふ。取り、と言って下さい。一番偉い人やすごい人は、一番最後なんですよ」
「ものは言い様だな」
もしかしたら、こういう小さなことが猿彦の言う「愚痴」になるのかもしれない。それでもその後回しの対価を頂戴しようと、内緒話をほのめかす眼差しで小路の先を指差せば、神依もすぐにその意を察したのかふわっと笑った。そのままこくこくと頷けば、溢れた感情が髪や袖にまで宿って跳ねる。
 二人だけの、約束と秘密。
 しかし神依などは“嬉しい”や“楽しい”が特に顔に出やすいので、禊は何かしら感付いていると思うのだが敢えてか問うてはこない。
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