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恋いろ神代記~神語の細~(おしらせあり)
第3章 誓約
 禊は禊で、それをすることが今の二人に取ってどれだけ野暮ったいことかわきまえているのだ。瑞々しく色付いた花を手折るような粗野で野暮なことはしないし、また男神の養生にも必要なことだと理解もしていた。
 だから夕餉の最中も、
「姉ちゃんなんか良いことあったの? 顔、すっげえニコニコしてる」
「えっ、そう?」
「何でも構いませんが、手元を疎かにして汁物を溢すのだけはお止めになって下さい」
と、相変わらず淡々と過ごしていた。



 「──それでは、お休みなさいませ」
「ああ、ご苦労」
「おやすみなさい。禊と童も、早めに休んで」
「ありがとうございます」
二つの布団を隣り合わせに敷き終えた禊と童は、その時ばかりは早々に部屋を後にする。
 こちらに戻ってより、日嗣と神依は夜の時間も度々共に過ごすようになっていた。もちろん日嗣に宛がわれた部屋もあるのだが、夜は神依の部屋の方が落ち着くらしい。普段は考えていなくても、眠るまでのわずかな時間、一人天井を眺めていると、上から暗闇に覗かれているような心地になるという。
 自分を救うために単身黄泉に降ってくれた背の神。だから神依も、今は何より日嗣の孤独の痕が癒えるよう尽くしていた。
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