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恋いろ神代記~神語の細~(おしらせあり)
第3章 誓約
 最初は、自分が行き来している奥社や水の森がこんなにあちこちに繋がっているなんて信じられなかった。だがそれもそのはず、多くの道はまじないによって秘されており、明らかにするにはそれを解く手順を踏まなければならなかったのだ。ただ日嗣からは、それも必要なことだと言われた。
 そもそも巫女達は童や禊と異なり、外の世に出ることはない。それを望む者もいないし、神々の側近くにあるため、只人とは関わりにくい生活様式になっているのだという。やはり八尋の大社を始めとする巫女達の住まう島々は神々の世界の範疇であり、その他は豊葦原とも異なれど、人の世であるらしい。
 考えてみたら、童がどこへ行きどうやって帰ってくるか、また禊がどこで食材や雑貨を仕入れてくるのか、自分はまったく知らない。炊事を担うようになって、それも一緒にやりたいと申し入れたこともあったが、禊は許してくれなかった。代わりに欲しいものは、言えばどこかから得てきてくれる。
 多少なりとも金が流通していることは知っていたが、神依が自ら稼いだことはないし、禊や友らはそれが当たり前だと言った。巫女や覡はただ神々に仕え、遊ばせ、あまねく人の世に平穏をもたらすためにあればいいと。そうすれば人々も国もまた豊かに富み、満ちた生き方ができる。そうして奉られるもので、自分達もまた満たされるのだからと。
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