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熱・愛・契約~熱・愛・事変
第2章 出逢い、夏フェス
「――っ?」
突然抱き上げられたしのは驚いて口をパクパクさせるが、言葉が出てこなかった。
その時漸く周囲の状況がわかってきた。今、一時的にライヴは中断しているらしかった。
オリオンの曲は止み、スタッフのアナウンスと客たちのざわめき声が聞こえる。
ステージの様子が今どうなっているのかは分からないが――しのに見えるのは堺の太い首と突き出た喉仏と黒子、彼の背の後ろに僅に見える空と入道雲だけだ。
つまり、しのは彼にしがみついていたのだ。初対面の男性にこんな事をするのは初めてで、怪我をしているとはいえ大胆なのかも知れない――けれど、堺は自分から率先してしのを抱き上げた割には非力だった。
抱えたそばから「っととっと――」と弱々しく呟き、危なっかしい足取りでヨタヨタ歩き、他のスタッフにぶつかりそうになっているのだ。
しのはそんな状態が怖くて彼にしがみつくしかなかったのだ。
正直、力に自信がないのならこんな事をしてくれなくてもいいのに――とも思ったが、そんな失礼な事を言うわけにもいかない。彼は善意からこうしているのだろうから……

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