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彼の秘密
第21章 夏休み
テーブルには、味噌汁と目玉焼きと焼かれたソーセージが並べられていた。
「簡単だけど、食え。白米は無いから我慢な」

「いえ、ありがとうございます」
若松先生も隣に座り椅子に腰を掛け手を合わせた

「あったかい」

「うまいか?」

首を縦に振り、お椀を置いた
「何もやる気が起きなくて、まだ遺品とか整理しなきゃなのに、なんにも出来てないんです」
できるだけ、笑ったつもりだった。
これ以上迷惑はかけてはいけない。自分のことは自分でやらなきゃいけない、そう思って口を引き上げた。でもうまくは行かなかったみたいだ
先生は、俺の頭に大きな手を乗せた。がっしりとした重みが心に響く

「そう簡単に気持ちに整理なんてつけれねぇよ。ゆっくりで良い。
そのための友達も居んだろ。こういうときだぞ、頼らなきゃいけないのは」

頭に置かれた手に微かに力がこもり髪の毛がくしゃっと崩れる、その仕草は昔父が俺にやっていたいたのを思い出してじわりと目頭が熱くなる

「・・・はい」

「じゃ、俺はこれから仕事だから。夏でも教師は仕事が溜まってるんだよなぁ。たりぃ・・・あ、そうそう何かあったら俺に連絡しろ」
若松先生は、すっと小さな紙を置いた。
それは先生の携帯番号だった
「え、いいんですか?」

「何か問題あるか?俺の連絡先知ってもお前いたずらとかしないだろ」

「それはもちろんですけど」

「なら困ったら電話しろ、友達も頼れ、そんでも足りない時は俺を頼れ。なんなら俺んちに泊まりに来るのもいい」

「いえ、流石にそこまでは・・・でも、いただいときます。
色々相談させていただくことがあるかもしれないので」

「おう、身体には気を付けろよ。」
玄関で靴を履く先生の背中は父親のようだった

「父さん」

「あっ?」

「いえ!!先生も気を付けて行ってください。ありがとうございました。」

「いや、お前の担任だからな。じゃ行ってくる」
その背中はドアの向こうに消えた、でもすぐにドアが開いた。

「あれ、先生忘れも…の」
振り返りざま黒い髪が頬を掠めて、暖かい体温に包まれた。
その正体に気が付いて、自然と背中に腕を回した
「雫、ごめん。ごめんね」

「先輩」
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