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彼の秘密
第5章 日常
保健室に連れてきた雫をベッドに座らせた。
彼の顔は、ひどく腫れていて痛々しかった。

だけど、雫は、笑っていてそれが不思議だった。
「なんで、笑っていられるんだよ?」

「だって、もうこれでいじめは酷くはならないでしょ?
俺も君も。」
その言葉は、自分の胸を締め付けた。
「・・・俺はさ、はっきり言うとお前が転入してきたときに喜んだんだ。
これで、いじめはなくなるんだって。
やっと、解放されて皆の中に入れるんだって。」

「・・・そう。」

「でも、結局いじめはなくらなくて。いじめは続いてなんでって思った。
俺は、思ったよ。こいつと一緒にされたくない。こいつと一緒にいじめないでって
お前は、俺に何にもしてないのに俺は、お前を恨んでた。意味もなく恨んでた!」

自分の声だけが保健室に響く、雫はその言葉をただ受け止めた。
ただ一言
「言ってくれてありがとう。」
だった。

「っつ!なんで、そんな言葉が出てくるの?俺はお前が守るようなやつじゃない。
いじめてた側の人間と同じなんだぞ。それなのに」

「でも、君は最後は守ってくれた。震えながらもあいつらにしっかりと気持ちを伝えた。」

「でも」

「でもじゃないよ、その事実が大切なんだから。ってお母さんが言ってた。
まずは伝えることが必要だって。
だから、俺は伝えた君も伝えた。それでいいじゃない。
だからね、急で悪いんだけど友達になってほしい。」

「は?」

「友達は、ダメかな。まだ、俺のこと恨んでる?」

「いや、そういうわけじゃなくて。寧ろお前のほうが」

「俺はそんなのはどうでもいい。あいつらとは友達にはなれないけど、君とならなれる。」
雫はそういいながら、握手を求めてきた。

俺は迷わずその手を取った。

それが俺らの関係の始まり。

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