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タイムリミット365
第11章 愛をありがとう
その後、気をきかせて、病室を出た浅沼さん。
再び二人きりになった病室は、さっきまでの空気とはまるで違っていた。
重く冷たい感じではない。
でも、さっきの事を気にする輝翔の戸惑った空気だけが病室を支配していた。
バツが悪そうにしている輝翔が、あまりに可愛くて私はプッと笑って近付く。
「なぁ?俺、そんなに優しくないか?」
笑った私を怪訝そうに見つめながら、輝翔が私に聞いてきた。
「嘘だよ。浅沼さんも、私も冗談言っただけ。輝翔は十分優しいよ。」
「なんだよ!ちゃかしてきただけか。心配して損した。」
そう言って輝翔が、私の頭をポンと叩いた。
その手がそのまま、今度は私の髪をゆっくり撫でていく。
私も輝翔のもう片方の手をギュッと握った。
手から伝わる輝翔の温かくて優しい温もりを、私はしっかりと感じていた。
輝翔が消えてしまわないように、強く強くその手を握りながら。
言葉のない静かな時間だけが過ぎていく。
でも、それは私にとってとても素敵な時間だった。