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タイムリミット365
第3章 365日の時間
広く続く砂浜を歩き、岩の上に二人座りゆっくりと、海を眺めていた。
おしては返していく波をジッと見つめていると、海岸をいつしか夕陽が染めていく。
「綺麗…。」
自然に口から出た、感動の言葉。
自然が作り出す純粋な美しさに、今まで触れた事がなかった。
ただ忙しなく、生きる為に必死で、毎日見ていたはずの夕陽も、今こうして見るまでは、美しいと感じた事がなかった。
「なぁ?羽音?」
「んっ?なーに?」
「まだまだ後、364日ある。誰に媚びる事なく、誰に気を遣うでもなく、自分がしたい事をその日その日、好きなようにやっていけよ。人生を急ぐ必要なんてない。自分の時間だろ?自由に生きろ。」
「そうだね…。」
「俺は人生を急ぎたくないんだ。その日その日に必ず意味がある。1日を大切にしたいんだ。何も死に急がなくても、人はいつか死ぬんだから…。」
「輝翔…?」
最後の方で輝翔の表情が、やけに寂し気に見えたのは、気のせいだろうか?
一瞬曇った表情に、意味はあるのだろうか?
多分、輝翔は輝翔なりに、色々と悩みだってあるんだろうな…。
1日を大切に…か。
輝翔の言葉が、やけに私の胸に滲みた。