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タイムリミット365
第6章 向き合う事
「羽音と出逢ったあのビルの下で、俺達は何度かすれ違ってるんだよ。」
「あっ…。私…。」
「羽音は、なかなか決心がつかなかったんだろうな。いつも、下からビルの屋上を眺めては、悩んでいただろう?」
「うん…。」
「不安そうに上を見上げる羽音が、いつの間にか気になっててな。まさかあの日、屋上でお前が決心していたなんて思わなかったよ。気づいてたら、お前に話し掛けてた。」
「輝翔…。」
「とうとう決心したんだな。って思ったけど、このままあの子は、いなくなっちゃうんだなーって。いなくなる前に、一度話してみたいなって、興味本意で話しかけた。」
「そうなんだ…。」
「話し掛けた羽音は、俺が思っていたよりも、元気で何だかビックリしたのは、本当だけどな。」
そう言って輝翔が、あの日と同じ笑顔で笑った。
「死ぬ前なのに、すごい元気だったもんな。本当はあの日もまだ決心なんてついていなかったんだろ?本当は誰かに、声を掛けてもらいたかったんだろうなって、俺は勝手に感じたんだけどな。」
「そうかもしれないね…。」
輝翔が言うように、私は誰かに死ぬなよ!って止めてもらいたかったんだと思う。
誰かに自分を必要としてもらいたかった。
自分の存在を認めて欲しかったんだ。
だから、あの日私を必要としてくれた輝翔と私は契約を結んだ。
私を必要としてくれていたから。
「こんな形でも輝翔は、あの時私を必要としてくれた。私は輝翔のおかげで今もここにいられるの。だから、輝翔に必要とされてないなら、この世にいる意味はないんだよ…。」
「羽音…。」
黙りこむ私達の頬を汐風が撫でていった。