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タイムリミット365
第7章 輝翔の真実
輝翔に連れて来られた場所は、やはり輝翔と初めて会ったあのビルだった。
私が死ぬ場所に選んだビル。
ここで、輝翔は何をしていたのだろう?
「俺の仕事先だ。今日は羽音もついて来い。ちゃんと紹介するから。」
「誰かに会うの?」
「あぁ、俺の仕事の相手。」
エレベーターに乗り、ついた先は出版社だった。
中に入ると、スーツを着た若い男の人が輝翔に近付いてきた。
「成海!原稿出来たのか?」
「ああ!やっと半分。見てもらえるか?」
「もちろん!で?こちらの方は…?」
輝翔と話していた男の人が、好奇の眼差しで私を見た。
その様子を見ていた輝翔が、紹介してくれた。
「俺の恋人の櫻城羽音だ。で、こっちは俺の担当で幼馴染みの、浅沼楓だ。」
「浅沼です!どうぞよろしくっ。」
そう言って浅沼さんが、優しい笑顔を私に向けて、名刺を渡してくれた。
輝翔の担当で幼馴染み…。
浅沼さんは懐っこい笑顔が印象的な感じで、輝翔とは正反対な印象だ。
初めて合った、輝翔の友達。
輝翔の家族や友人、輝翔の周りの人間を見た事がなかったから、私も好奇の眼差しで浅沼さんを見つめてしまった。
「それにしても、成海が恋人を連れて来るなんて、どういう心境の変化だ?」
「別に。ただこいつに、俺の仕事を教えたかっただけさ。」
「そうか?そんな感じでもないようだけどな。羽音ちゃんは、成海の本読んだ事あるの?」
「あっ!はい!」
浅沼さんに急に質問されて、素直に返事しちゃったけど、輝翔にはあの部屋に入った事言ってなかったんだっけ…。
ヤバイ…どうしよう。
チラッと困った顔で輝翔を見ると、焦る私を見て笑っていた。