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恋の行方を探してください【完結】
第26章 【二十六話】ジュエリー・コバヤカワ

美哉はまた同じようにカードをかざし……という作業を残り二回やった先には、唐突に廊下が現れた。三つ目のゲートを通り抜ける前にやたらに壁が近くに見えるなとは思っていたけれど、ロビースペースみたいなものがあると思っていたため、この造りが意外だった。
「スペースの関係でこんな変な作りになったみたいなんだ」
「なるほど……」
ジュエリー・コバヤカワは宝石を扱っているということで、洗練されたオフィスになっているのかと思っていたのに、入場ゲートのせいで思わぬ弊害を生んでいるようだ。
「美哉」
「なんですか」
先ほどまで距離を取っていたというのに、由臣は三つ目のゲートをくぐり抜けるなり美哉に近寄り、手を握ってきた。
「由臣さんっ、なんで手をつないでくるんですかっ」
「迷子にならないように?」
と疑問系で返ってきたけれど、美哉はすぐにそれが嘘だと気がついた。
またもや指先が氷のように冷たかったのだ。しかも顔を見ると、その表情は小夜と対峙していたときと同じ、不遜な笑みを浮かべたもの。
「もしかしなくても、緊張しています?」
「しているように見えるなら、美哉の目は節穴だね」
と強がりの返事が返ってきたけれど、緊張しているのは間違いないようだ。
真那も言っていたけれど、この人は思っている以上に臆病だ。だけど小早川という立場上、偉そうに、不遜な態度を取らないとならないことを知っていて、無理している。
美哉と知り合うまではきっと、一人でそれを抱え込み、乗り切ってきた。美哉という甘えてもいいと思う相手が出てきて、無意識のうちにすがっているのかと思うと、昨日、由臣に言った言葉に対して後悔しそうになる。
だけど、美哉としては、簡単に覆すことができないという思いが強くて、キュッと唇を噛みしめた。
「さて、行くか」
「スペースの関係でこんな変な作りになったみたいなんだ」
「なるほど……」
ジュエリー・コバヤカワは宝石を扱っているということで、洗練されたオフィスになっているのかと思っていたのに、入場ゲートのせいで思わぬ弊害を生んでいるようだ。
「美哉」
「なんですか」
先ほどまで距離を取っていたというのに、由臣は三つ目のゲートをくぐり抜けるなり美哉に近寄り、手を握ってきた。
「由臣さんっ、なんで手をつないでくるんですかっ」
「迷子にならないように?」
と疑問系で返ってきたけれど、美哉はすぐにそれが嘘だと気がついた。
またもや指先が氷のように冷たかったのだ。しかも顔を見ると、その表情は小夜と対峙していたときと同じ、不遜な笑みを浮かべたもの。
「もしかしなくても、緊張しています?」
「しているように見えるなら、美哉の目は節穴だね」
と強がりの返事が返ってきたけれど、緊張しているのは間違いないようだ。
真那も言っていたけれど、この人は思っている以上に臆病だ。だけど小早川という立場上、偉そうに、不遜な態度を取らないとならないことを知っていて、無理している。
美哉と知り合うまではきっと、一人でそれを抱え込み、乗り切ってきた。美哉という甘えてもいいと思う相手が出てきて、無意識のうちにすがっているのかと思うと、昨日、由臣に言った言葉に対して後悔しそうになる。
だけど、美哉としては、簡単に覆すことができないという思いが強くて、キュッと唇を噛みしめた。
「さて、行くか」

