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恋の行方を探してください【完結】
第26章 【二十六話】ジュエリー・コバヤカワ
 違います! と叫びたかったけれど、いくら否定したところでこの男性は由臣の言葉しか信じそうになかったので、美哉は諦めて、黙った。

「ところで、他の社員は?」
「少し席を外させました」
「なるほど。それで──槇の席は?」
「そこになります」

 他の社員がいるところで調査となると、業務中にごそごそされたら気になるだろうし、気兼ねなく調査することもできない。

「遠慮なく見させていただきます」
「はい、どうぞ」

 ここでようやく、手を離してくれると美哉は思っていたが、甘かった。
 由臣は器用に片手で槇の机を物色し始めた。片手で机の引き出しを開け閉めし、机の上に置いてあるパソコンの電源を入れて、器用に左手でマウス操作を始めた。
 さすがにパソコンは両手で操作をした方が効率がいいと思うのだけどと思って手を離そうとしたけれど、軽くつないだままだった手が、指を絡まされて、外れないようにされてしまった。

「きれいに片付いているな」
「そうなんです。まるで身辺整理をした後のようで……」
「……ふむ」

 デスクトップPCにモニタが机の上に置いてあり、その他には電話とペン立て、メモ帳。それから机の端にブックエンドで支えられたファイルと雑誌など。片付けられた机の上という感じで、特に不自然なところはないように感じた。

「普段からこんなに片付いていたんですか?」

 槇の机以外を見ると、他の人たちの机の上もそれなりに片付いて見えた。だからこれが普通だと思ったのだが、男性は首を振った。

「ちょっと前まで机の上に書類が山積みになってましたね。今、ちょうど新ブランド立ち上げのためにデザインのための見本や試作品、隣の部屋は作業場になっているからそちらもかなり乱雑になっています。それが気がついたら、槇の机の上は妙にこぎれいになっていました」
「試作品は?」
「こちらに関しては、隣の部屋から持ち出せないため、残っていました。ご覧になられますか?」
「あぁ、お願いする」

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