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恋の行方を探してください【完結】
第32章 【三十二話】第一の死体

由臣は無言で靴のまま中に入ると、室内を見回した後、大きく首を振り、それからすぐに出てきた。
「予想どおり、死んでいた」
「え、だれがですか」
「金山果代の母親だよ」
「それでは、連絡が取れなかったのは……」
「部屋にいたけれど、死んでいたから、だな。ちなみに、部屋の中には金山果代はいなかった。母親が亡くなったのは、金山果代が失踪した後なのか、亡くなったからいなくなったのか、そこは分からない。勝千代に連絡はしたから、警察が来るだろう。その前に俺たちはここから移動するぞ」
「……いいんですか」
「いいんだよ、通報はしたんだから。それに、あれはどう見ても死後一週間は経っている」
「ひぃ」
青い顔をしている美哉を見て、由臣は少し困ったように眉尻を下げた後、美哉の頬を撫でた。その指先はやはり冷たい。
「怖いか」
「……怖いに決まってるじゃないですか!」
「そうか、それが普通の感覚で、普通の反応だ」
「由臣さんは怖くないんですか」
「俺だって怖い。だから逃げるんだ」
「……へっ?」
「ほら、行くぞ」
由臣はそう言うと、美哉の手を取りつなぐと、走り出した。美哉もつられて走り出す。
そうして走って車まで戻り、後部座席に乗り込んだ。
「川村、今からいう住所に向かってくれ」
「かしこまりました」
由臣は川村に槇のマンションの住所を伝えた。
車が動き出しても、美哉は金山が住んでいるというアパートの一室に死体があったという事実が恐ろしくて、震えていた。
由臣は無言で美哉の肩を引き寄せ、ぎゅっと抱きしめてくれた。
暑っ苦しいくらいの体温と、ほんのりと香る柑橘系の香り。
先ほどから由臣が近づく度に鼻を掠めていたのは、由臣が付けている香水の匂いだったと、今、初めて気がついた。それよりも、由臣のキャラに合わないような気がする匂いのチョイスに、美哉は身体から力が抜けていくようだった。
「美哉?」
「予想どおり、死んでいた」
「え、だれがですか」
「金山果代の母親だよ」
「それでは、連絡が取れなかったのは……」
「部屋にいたけれど、死んでいたから、だな。ちなみに、部屋の中には金山果代はいなかった。母親が亡くなったのは、金山果代が失踪した後なのか、亡くなったからいなくなったのか、そこは分からない。勝千代に連絡はしたから、警察が来るだろう。その前に俺たちはここから移動するぞ」
「……いいんですか」
「いいんだよ、通報はしたんだから。それに、あれはどう見ても死後一週間は経っている」
「ひぃ」
青い顔をしている美哉を見て、由臣は少し困ったように眉尻を下げた後、美哉の頬を撫でた。その指先はやはり冷たい。
「怖いか」
「……怖いに決まってるじゃないですか!」
「そうか、それが普通の感覚で、普通の反応だ」
「由臣さんは怖くないんですか」
「俺だって怖い。だから逃げるんだ」
「……へっ?」
「ほら、行くぞ」
由臣はそう言うと、美哉の手を取りつなぐと、走り出した。美哉もつられて走り出す。
そうして走って車まで戻り、後部座席に乗り込んだ。
「川村、今からいう住所に向かってくれ」
「かしこまりました」
由臣は川村に槇のマンションの住所を伝えた。
車が動き出しても、美哉は金山が住んでいるというアパートの一室に死体があったという事実が恐ろしくて、震えていた。
由臣は無言で美哉の肩を引き寄せ、ぎゅっと抱きしめてくれた。
暑っ苦しいくらいの体温と、ほんのりと香る柑橘系の香り。
先ほどから由臣が近づく度に鼻を掠めていたのは、由臣が付けている香水の匂いだったと、今、初めて気がついた。それよりも、由臣のキャラに合わないような気がする匂いのチョイスに、美哉は身体から力が抜けていくようだった。
「美哉?」

