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恋の行方を探してください【完結】
第19章 【十九話】名前が違います!
もちろん、出て行くと言っても、宛てがあるわけではない。とはいえ、ここまで言っても修正してくれないようならば、文無しでも出て行く覚悟はあった。
「出て行くと言っても、金もないのに?」
「なくても、私、女ですから、どうにでもなります」
美哉は由臣の手を振り払うと、立ち上がった。
「私は宇佐見美哉であって、小早川美哉ではありません。そんな嘘の身分証、要りません」
「…………」
「修正してもらえないのなら、本気で出て行きます」
「……美哉」
「由臣さん」
美哉は由臣に向き直り、じっと顔を見た。
由臣の表情はかなり凍り付いていて、あと一押しであると分かった。
「与頭として、最初で最後のお仕事をさせてもらっていいですか」
由臣は目を見開き、美哉を見上げた。
「私、与頭を辞めますけど、私に忠誠を誓った御庭番たち、処分するなんて物騒なこと、止めてくださいね」
「ちょ……ちょっと待て、美哉!」
「それから、次の与頭が見つかるまで、由臣さん、また代理を……」
「分かった! 分かったから! 俺が悪かった! 直す、直すから! 出て行くとか、助手と与頭を辞めるって言うのは止めてくれ!」
由臣の情けない声に、美哉はさすがにやり過ぎたかなと思ったけれど、ここまで言わないと由臣は動いてくれないのが分かった。とはいえ、これは何度も通用する手ではないと思ったし、多用したらただのわがままな嫌な女になってしまうので、今回だけにしようと心に決めた。
「分かればいいんですよ、分かれば」
二人のやりとりを黙って見ていた真那は、ぷっと吹き出した。
「ぷっ、さいこー! さっきもだけど、美哉さん、三男を翻弄して、すごい! あなた、最高よ!」
「え……あ……」
すっかりここに真那がいることを忘れていた美哉は、その声に顔を真っ赤にした。
「あ……私……」
「うんうん、いいわね。三男を手のひらの上で転がすくらいじゃないと、与頭なんて務められないわよ! それに三男のあの顔! 当分、笑えるわ!」
「きのこちゃん、おまえ……覚えておけよ」
「わたし、きのこじゃないから覚えていられないわ」
「…………っ!」
言い負かされた形になってしまった由臣を見て、美哉は思わず真那と顔を合わせて、お腹を抱えて笑ってしまった。
「出て行くと言っても、金もないのに?」
「なくても、私、女ですから、どうにでもなります」
美哉は由臣の手を振り払うと、立ち上がった。
「私は宇佐見美哉であって、小早川美哉ではありません。そんな嘘の身分証、要りません」
「…………」
「修正してもらえないのなら、本気で出て行きます」
「……美哉」
「由臣さん」
美哉は由臣に向き直り、じっと顔を見た。
由臣の表情はかなり凍り付いていて、あと一押しであると分かった。
「与頭として、最初で最後のお仕事をさせてもらっていいですか」
由臣は目を見開き、美哉を見上げた。
「私、与頭を辞めますけど、私に忠誠を誓った御庭番たち、処分するなんて物騒なこと、止めてくださいね」
「ちょ……ちょっと待て、美哉!」
「それから、次の与頭が見つかるまで、由臣さん、また代理を……」
「分かった! 分かったから! 俺が悪かった! 直す、直すから! 出て行くとか、助手と与頭を辞めるって言うのは止めてくれ!」
由臣の情けない声に、美哉はさすがにやり過ぎたかなと思ったけれど、ここまで言わないと由臣は動いてくれないのが分かった。とはいえ、これは何度も通用する手ではないと思ったし、多用したらただのわがままな嫌な女になってしまうので、今回だけにしようと心に決めた。
「分かればいいんですよ、分かれば」
二人のやりとりを黙って見ていた真那は、ぷっと吹き出した。
「ぷっ、さいこー! さっきもだけど、美哉さん、三男を翻弄して、すごい! あなた、最高よ!」
「え……あ……」
すっかりここに真那がいることを忘れていた美哉は、その声に顔を真っ赤にした。
「あ……私……」
「うんうん、いいわね。三男を手のひらの上で転がすくらいじゃないと、与頭なんて務められないわよ! それに三男のあの顔! 当分、笑えるわ!」
「きのこちゃん、おまえ……覚えておけよ」
「わたし、きのこじゃないから覚えていられないわ」
「…………っ!」
言い負かされた形になってしまった由臣を見て、美哉は思わず真那と顔を合わせて、お腹を抱えて笑ってしまった。