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古傷
第1章 ・・・1
ボタボタボタ ザーー ガタガタ ボタン ポタン...
傘に当たる雨はまるで楽器が奏でる音のように聞いていて心地が良い

地面を踏めば跳ね返る水

雨の日特有の湿った匂い

およそ多くの人が好きでは無さそうな雨が好きだ

傘という壁で人と人との距離を保ってくれる
ベタついた熱に侵されることがない

「はぁ、仕事行きたくないなぁ。」

こんな日に仕事なんて行く気は起きなかった

「いっそ、どこかに行けたら良いのに」
どこに行くわけでもなく民家の間にある畑の横を歩く

久しぶりの散歩は楽しいな、そうだこの後は電車にでも乗ってパンケーキでも食べて帰ろうかな

そうと決まれば、少し歩調を速めた

が、ピタリと足を止めた
3メートル先の角から出てきた男とばっちり目が合ってしまったからだ


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