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古傷
第1章 ・・・1
男の肩はびしょ濡れで髪もというか全身ずぶぬれだった。
先ほどまでかなり降っていたので、足元が濡れていてもおかしくはないけど全身までとなるとやはりおかしい

・・・傘さしてるのに

不思議な人だ、彼も雨が好きなのかとも思ったがあまりそうは思えないほどに表情は暗い

一番不思議なのは私を不思議そうに、怖いものをみるように怯えた目で見ていたことだった。

「ま・・・ぃ」

口を薄く開いて何かを言ったらしいけど、あいにく雨で聞こえなかった。
そして彼は私に背を向けて急いで走っていった・・・逃げていったが正しいかも

なんとなく機嫌を損ねた私はそのまま彼をほっとこうと思ったけど、前方には踏切に信号がかんかん鳴り響いていることに気が付きすぐさま傘をほおりだして彼を追いかけた。

「待って!」

呼び掛けても彼は向いてくれない。
減速もして無さそうだ
右からは電車が迫り、遮断機は降りようとしている
信号の音がより自分を焦らせた

彼が降りてきた遮断機を潜りかけた時彼の腕を強く掴み後ろに引いた
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