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天使さまっ!
第14章 続編 天国へと続く恋
ある日事件は起きました。
朝、病院に行くと昨日の当直医だった外科の先生がエリン先生に声をかけてきたのです。
「夜中に入った急患の子なんだけど。昔天使先生が担当してた患者さんで、……覚えてるかな?」
差し出されたカルテを見て、エリン先生の顔付きが険しくなりました。
「……自殺未遂ですか」
「みたいだね。腕にたくさん傷跡あったし、たぶんだいぶ前からだね。他所の病院で抗鬱剤処方されてたらしい」
「…………」
「良かったら後で顔出してあげてよ」
外科の先生が立ち去ってから、エリン先生はずっと沈黙していたので、私は過去のカルテからその患者さんを探してみました。
《一戸 ゆりえ》。先天性疾患で長いこと入院していた女の子のようです。エリン先生と同い年で、私が勤務するより前に退院しています。
「……せっかく病気が治ったのに」
どうして自殺なんてしようとしてしまうのでしょう。
「ゆりえちゃんはずっと外の世界に憧れてたよ。学校とか通うの楽しみだなぁって言って退院してったんだ」
何年経っても、エリン先生の中では患者さん一人一人の記憶が鮮明なのかもしれません。こんな形で再会なんて、望んではない結果ですが。
「お見舞い行きますか」
俯いたエリン先生が小さな声で「自信ないな」と呟き、私は胸が苦しくなりました。
「先生に会えばきっと元気になりますよ」
だってエリン先生だし。きっと大丈夫。
でも先生が心配してたのは、そんなことじゃなかったんですね。